鳥取県境港市の郷土料理で、油揚げの中にお米や野菜を入れ炊き込んだもの。一見いなりずしのようだが作り方は全く異なる、弓ヶ浜の代表的な郷土料理であり、「ののこ」とも言われる。昔は、何か特別な行事があった時などに各家庭で作られ、近所に振舞われた。まだお米が貴重だった時代には大変なご馳走とされ、近所の方の「もらう」ではなく「頂く」という感謝の気持ちがそのまま、この「いただき」という名称になったと言われる。
「いただき」は、大きな油揚げの中に生の米と野菜を詰め、だし汁で炊き上げる郷土料理です。この料理は古くから伝わり、明治中期頃には境港市にあるお寺の住職が福井県のお寺で精進料理として提供された油あげを気に入り、帰ってきて自ら米と野菜を詰めて炊いたことが始まりとされています。「いただき」の名前の由来にはいくつかの説があり、米が貴重だった時代に贅沢なごちそうとされ、近所の方に「もらう」ではなく「頂く」という感謝の気持ちがそのまま名前になったという説や、大山の頂上の形状に似ていることからこの名前がついたという説もあります。また、「ののこ飯」とも呼ばれ、ふっくらとした形状から派生したといいます。
昔は特別な行事がある時に家庭ごとに作られ、近所で振る舞われたものでした。当時の米の貴重さから、少量の米でおなかいっぱいになるようにと、様々な具材を入れて工夫されたと伝えられています。そのため、具材や味付け、作り方は各家庭で微妙に異なり、地域ごとに「おふくろの味」として受け継がれています。
外観は大きないなりずしに似ていますが、調理法や味わいはまったく異なります。大きな油揚げには生米と生野菜が詰まり、だし汁でゆっくり炊き上げられた山陰地方の代表的な郷土料理です。昭和30代から40年代にかけては、境港市では鶏肉や赤貝を入れたり、赤貝の煮汁で炊くバリエーションもあったそうです。
主な伝承地域:西部地域、弓ヶ浜(ゆみがはま)半島
主な使用食材:米、三角油揚げ、ごぼう、人参、干ししいたけ