特徴
小鹿渓は、三徳川の支流である小鹿川の上流域に位置し、神倉地区から中津ダムまでの約4.3キロメートルにわたる渓流です。
小鹿川は、中国山地の三徳山と三国山の間を流れます。この地域の地層は古い花崗岩層で、海底に沈んで礫岩層を作り、これが隆起した後に溶岩が噴出し礫岩層の上に積み重なっています。急流がこれらの地層を侵食する過程で、多数の洞窟や甌穴が形成され、急峻で複雑な地形が生まれました。三徳山の南麓側が小鹿渓となり、北麓側が三徳渓となります。
小鹿渓では、谷底の岩石が黒雲母花崗岩で、斑れい岩、閃緑岩、輝緑岩が川床を横切るように散在しています。谷が入り組んで多くの淵や滝を伴い、高低差の大きな崖によって気温の逆転現象が生じ、特異な生態相が形成されています。これらが相まって奇勝とされています。
動植物
小鹿渓は標高400メートル前後で、冬には多くの積雪があり、夏は冷涼です。ブナの群落が見られ、鳥取県内のブナ林としては標高が低いことが特徴です。その他、高木ではイヌブナ、オニグルミ、サワグルミ、トチノキ、ミズナラが群生し、ウラジロガシ、アカガシ、ミズメ、イタヤカエデ、ホウノキ、スギ、カツラ、アズキナシが混在しています。
水棲生物では、ヤマメ、イワナ、オオサンショウウオが生息しています。
文化
小鹿渓の「弥六淵」には、次のような民話が残されています。
小鹿村の木地師の弥六が、行方不明になった母を探しに山奥へ入ると、大きな淵の底に巨大な水蜘蛛が潜んでいました。母はこの水蜘蛛に食べられてしまったのです。
弥六は仇討ちのために神社で願掛けをし、氏神によって巨大なヒキガエルに変えられました。ヒキガエルとなった弥六は水蜘蛛と闘い、危機を迎えましたが、許嫁の竜が現れて救い出しました。
水蜘蛛を倒して仇討ちを遂げた弥六は、約束通り山に登り岩に姿を変えました。その周りを許嫁の竜が守っているといわれています。この淵が「弥六淵」です。