特徴と歴史
こも豆腐は、粗く織ったわらのむしろで包まれた素朴な豆腐料理です。100年以上伝わる「こも豆腐」は、冠婚葬祭や祭り、法事などの特別な日に欠かせない、倉吉市などの中部地域の伝承料理です。
魚があまりとれなかった鳥取県では、豆腐が庶民の貴重なタンパク源としてよく食べられていました。かつて村には共同の豆腐小屋があり、多くの豆腐を作ることができ、その楽しみ方の一つとして「こも豆腐」が生まれたという説もあります。
しかし、昭和30年代にスーパーマーケットが登場すると生活や食事が変化し、「こも豆腐」も次第に作られなくなりました。
現在では、わら自体も手に入りにくくなっています。きれいに天日干しされたわらは、「こも豆腐」を作るのに重宝されました。今では家庭で作られることは少なくなりましたが、行事やおもてなしの場で汁の具として使われることがあります。
作り方
材料の準備: 薄切りにした豆腐に、細長く切ったニンジンやゴボウを入れます。
包む: これをわらづとで包みます。
加熱: 包んだ豆腐を茹でるか蒸します。
調理: わらづとから取り出し、調味した汁で煮ます。
こも豆腐は、砂糖や醤油などの調味料で味を染み込ませるように煮たり、輪切りにしてわさび醤油をつけて食べることもあります。定番の具材は人参とごぼうですが、卵やかんぴょう、ほうれん草、旬の野菜なども使われます。
わらで包むことで、わらの香りが豆腐に移り風味が良くなり、わらの筋が豆腐に独特の形を与えます。茹で上がったばかりのこも豆腐は、わらの良い香りが漂い、断面についたわらの筋とともに温かみが感じられます。